あなたとホワイトウェディングを夢みて
 結婚の約束をしたばかりなのに郁未が素っ気ない。逞しい郁未の腕にもう少し抱きしめられてキスして欲しかったのにと、少々不満げな表情の留美を横目で見た郁未が苦笑して言う。

「このままベッドに居れば君を抱いてしまう」

 プロポーズされた時点で覚悟していた。いや、本当はもっと前から郁未に触れて欲しいと内心そう思っていたはずだ。ただ、心の準備が出来ていなかっただけで。
 だから、結婚を決めた今、郁未とベッドをともにすることに抵抗はない。なのに郁未は首を横に振り『君を大事にしたいから』と言ってはカウチソファに置いたシャツを取り袖を通していく。その動作は速く、留美が躊躇している間に郁未は昨日の姿へと戻っていく。
 そして留美の服までも手に取ると留美へと差し出した。

「さあ、指輪を買いに行こう」

 優しい眼差しで見つめられると留美には抗えない。服を受け取りベッドから降りようとすると郁未はすぐに背を向け、『リビングで待ってるよ』と言い寝室から出てしまった。
 下着姿の留美に配慮しての行動なのか、女の裸体を見慣れていそうな郁未なのに拒絶されているようで留美は戸惑うばかり。恋愛経験が乏しい留美には今の状況が不可解で不満を募らせる。結婚を決めた者同士とは、もっとキスしたり触れ合ったりそれ以上のことに夢中になるものだと――

(でも、私を大事にしたいからって……彼を信じなきゃ)

 これまでたくさんの女性たちと浮き名を流した郁未だが、最後に選んだのは堅実な自分なのだと言い聞かせる。他の美しい女性たちと自分を比べて卑下する必要はないと――
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