あなたとホワイトウェディングを夢みて
 留美の性格から厳格な父親像をイメージしていた郁未だが、あの和室の威圧感とはまったく無縁で無害そうな父親感に多少気落ちしてしまったが、今はそんなことはどうでも良い。
 今は留美を追いかけるのが先決だ。
 留美の実家を出た郁未は車を走らせ、ホワイトウェディングのポスターに写っている島を確認しようと、先ずは留美のアパートへと急いだ。
 留美の両親の口調から、留美は今朝出立したはず。もし、行き先がこのポスターの島であれば、きっと留美に追いつける。
 留美がホワイトウェディングを希望するのなら、その願いを叶えてやりたい。だから、小島で留美を見付けることが出来れば、今夜は二人で現地に宿泊し、二人で結婚式の下見をすればいい。

(二人で行けば良いのに、何故一人で旅に出た?)

 まだ信用されていないのだろうかと、妙な胸騒ぎを覚える郁未は気ばかりが焦る。
 昨夜から姿を消したようにいなくなった留美の手掛かりを掴んだものの、一人旅に出かけた留美の気持ちが理解できず郁未は混乱するばかり。
 不安がよぎる中、留美の足取りを追いながら、留美への思いを馳せる。

(留美、無事でいろよ)

 ポスターの小島は調べてみると意外と近場の小島だった。留美のアパートから車を走らせること二時間あまり。小島行きフェリーが運行する港があり、そこから車ごと乗船し、郁未は小島へと向かって行った。
 留美のアパートの茶の間に大事そうに置いてあったホワイトウェディングのポスター。雪が舞い降りる中、純白のウェディングドレスを身に纏い、真っ白なタキシードを着た新郎と新婦は愛を誓い合う。
 愛しい留美と愛を誓い合う日はすぐそこまで来ているのだと、郁未は真摯に海原を見つめる。

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