あなたとホワイトウェディングを夢みて
 まだ心の準備が出来ないまま、会場入りと同時に挙式が始まる。
 緊張が走ると、この結婚から逃げ出したい気持ちが強まるが、スタッフを困らせる結果は望まない。留美は人生諦めが肝心だと自分に言い聞かせる。

「みなさんお待ちです。さあ、お入り下さい」

 スタッフに手を引かれ挙式場へとやって来たが、やはりここにも新郎新婦の家名入りの案内板はない。
 スタッフが扉を開けると、豪華な装飾品も派手な色調もなく、実にシンプルな会場の一番奥に、神々しい神殿が設えてあるのが留美の目に飛び込んでくる。その両脇には、新郎の立ち位置側に新郎の親族が、そして新婦側に新婦の親戚が並ぶ。
 新婦側の親戚の顔触れは間違いなく自分の親戚たちだ。見慣れた親戚の叔父や叔母、両親の顔が見える。両親の顔を見た留美は少しホッとする。
 だが、いよいよ挙式を上げると思うと心拍数が上がり緊張が高まる。そして、既に新郎は神殿の前に立ち新婦の入場を待っている。その新郎の和服姿が目に入る。

(専務と同じくらいの背格好かしら? でも専務よりちょっと年上? 専務はざんばら頭だから……)

 多少なりとも郁未に似た箇所があれば愛せるかもしれないと、つい新郎と郁未の姿を比べていた。

(……ああ、やっぱりこの人も背が高くて逞しい身体だわ)

 神前へと進んでいく留美は、近づく新郎の姿が郁未と重なってしまう。郁未恋しさに新郎が郁未に見えてしまう。

(私、無理だわ。……ああ、でも、どうしたら……)

 新郎の隣までやって来た留美は、どうしてもこの挙式を拒みたくて、郁未意外の男性は受け入れられないと叫ぼうと構えた。
 瞳を潤ませた留美が意を決して顔を上げ、新郎側へと視線を移すと、そこには何故か留美が勤務する、会社の社長の顔がある。

「社長?!」

 留美に気付いた俊夫がにっこり微笑んで軽く頷く。

「これ、どういうこと……?」
「……?!」

 留美の声に驚いた新郎もまた、目を丸くして新婦の顔を覗き込む。

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