狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
19 究極の痩せ我慢
社に戻ってから彼は、私に課に上がらずに待つようにと命じた。

課の皆にも、顔を見られたくないからちょうどいい。

言われた通りにエントランスの片隅で待っていると、彼はすぐに降りてきた。
「行こうか」

彼はどうやら本当に、歳末の貴重なアフター5をフルで付き合ってくれるつもりらしい。




その夜、私は大いに荒れた。
 
女友達にだってしないような世にもミジメなフラれ話を、
異性の、ましてや仕事の上司でしかない彼に半ばヤケクソにぶちまけた。

隠しようもないほど全てを見られてしまったことが、私の口をより滑らかにした。


寺田さんの事、ハヤト君の事…


いつもみたいに、毒づいて笑い飛ばしてくれるなら、それはそれでいいと思った。

だけど彼はそうはしなかった。
あくまで真摯な顔つきで、グダグタ話を聞いてくれた。



「……とまあ、そんなワケで。寺田さんの事はもういいんです。
うすうすそんな気がしてましたから。
それよりも私は……ん?」

「全っ然良くない…」

見ると彼の握りしめたグラスが、ピシッとひび割れている。

「うわっ。か、カチョー?」
「アイツだけは赦せない…」
< 174 / 269 >

この作品をシェア

pagetop