狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
20 気づいた時は

ああ。

穴があったら入りたい。



あの後___

すっかり眠りに落ちてしまった私は、次の朝、大神さんに揺り起こされて目を覚ました。
時計を見ると朝の5時。

起き抜けに真っ先に目に入ったのは、ヨレヨレスーツにバサバサの髪、真っ赤に充血した目の、憔悴しきった大神さんのアップ顔だった。

「きゃうっ」
思わず叫び声を上げた私に、

「……タクシー呼んだから」

それだけ告げると、彼はフイッと部屋を出ていってしまった。

えーっと……?

彼が出たあと、暫くキョロキョロと辺りを見回した私は、昨夜の醜態を急速に思い出した。

うっわ、私ってば‼ 

咄嗟に起き上がって、バッと自分の姿を確認すると、何故かコートも着たままだ。
 
ホッと胸を撫で下ろす。

良かった、オソわれたりはしてないみたいだ。


タクシーの中でも彼は、始終ウトウトとしていた。
昨夜の出来事について話す機会はないまま、私が先にワンルームの前で車を降りた。

「じゃあ、また会社で」
彼は目頭を指で押さえつつ言うと、片手を振って去っていった。

大神さん、もしかしてずっと起きてたんだろうか。
私を不安がらせずに、よく眠れるように…
 
それとも……私の寝相が悪かった?
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