狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
さて、
元いた場所に舞い戻ってきた私は
大神サンの姿を探していたが、
どうしたことか姿が見当たらない。

用事が長引いているんだろうか。

キョロキョロと辺りを見回すと、
向こう側の、一際大きなクスの木の影にチラリと動く影が見えた。

あ、いた!

変なの、あんなところに隠れちゃって。

訝しく思いながらも私は、草の茂った小路を掻き分けて、彼の元へと足を急がせた。

「オッオガミさ~~……」

あれ?

何やら揉めている様子。
女の高い金切り声に、小声で嗜める大神さんのテノールが木陰から聞こえてくる。

マズイと思い、私は咄嗟に身を隠した。


すると、なんとまあ…

私がいる場所からは、ちょうど泣きわめく女に宥める彼の姿が見えた。

『コイツァ旦那、痴情の縺れってヤツですかぃ?』

昨夜見た時代ドラマの台詞を頭に巡らせていた、その刹那。
 
女が、彼の首に手を回した。

……お?
 
彼が緩やかに首を傾げた。

オオッ‼‼

当然目を反らすべきだったのに……

その時の私は
ついその光景に見入ってしまったんだ。


スッゴい……

大神さんとさっきの女が


キスしてる。
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