狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
……更に1時間が経過した。
長居を決め込んだ私達は、酔っぱらいのグダグタ話に突入している。

「だってよぉ…彼女、瀬口サンな。
『これで最後にするから』って、涙ながらに訴えるんだぜ?
“ああ最後か” って思うじゃん?
…大体なんでテメエは、こんな時だけ早く来るんだよ」

苦り切った表情の大神さんは、昼間の出来事をボヤいた。

チッチッ…
私は人差し指を口に当てて、舌打ちを2回した。
「大神さんもオンナゴコロが分かってないなあ……そんなのはね、繋ぎ止める為に決まってるでしょ。
『思い出してぇ、私を』ってね」

キラキラと瞳を輝かせ、声色を変えて演技する。

「気持ち悪いな。
……彼女もな、去年本社にいた頃はあんなじゃなかったんだ。『アソビだから気にしないで…』って…本当にアソんでる風だったのに」

「バッカだなあ。
『アソビ』って本気で言うようなオンナ、居ませんって。
世の中そんなに甘くないれすっ」
 
バンバンと机を叩く。

「…だよな。失敗だった、やっぱ1回で終わっとくべきだったよ。痛かったなあ…アレは」

シミジミとどこか遠い目をする彼。
睫毛をふせ、愁いを帯びた表情はなかなかにキマっている。

ただし、会話の中身が最低でなければだが。

「とにかく、別れた女にチューはダメれす…」
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