君色キャンバス

『お前はもう二度と澄み切った世界に棲む事なんて許されない』
 
 今でも思い出すだけで反吐が出そうになる程、俺はアイツの顔を覚えている。

 あの日から俺の時間は止まったままだったんだ。

 
 中野の心は、あまりにも潔癖すぎる。

 だから真実はあまりにも滑稽で見るに見れない世界なんだと気づいて欲しくない。

 そのままの中野の詩が、俺の今の世界。

 
 俺はスケッチブックを取り出し、中野の詩をまた思い出し、そのまま鉛筆で描いていく。

 自分は絵が好きだった。


『自分の運命なんてどうしようもなかった……』

 
 そう俺の前で最期の言葉を言い残したアイツはもう居ない。

 だけど止まったままの時間は、もう俺に好きな事を奪い去ってしまった。

 でも……――

 中野の詩は止まった時間を少しでも進めてくれるんだ。


 鉛筆を待つ手が俺を放そうとはしない。

 止まらない手先。

 そこから広がる澄み切った空。


 中野の心。



「出来た」 
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