君色キャンバス
「あああのね、このプリントを……」

 差し出したプリント。

 そのプリントに一之瀬君は視線を落とすと、そのまま受け取って「じゃ」と玄関の扉を閉めようとした。
 
 私は思わず、ばっと閉めようとした扉を手で掴み、止めた。

「――何?」

 怪訝な顔。

 その顔にさっきまでの勢いがぐっと弱まる。

「明日は……学校、来れる?」

 何訊いてるんだと思いつつも、何だか一之瀬君から目が離せなかった。

「明日……か」

「う、うん」

「ちょっとそこで待ってて」

 そう言い残し、一之瀬君は部屋の奥へと消えてしまう。

 私は思わず玄関から見える一之瀬君の家をまじまじと見つめる。

 部屋の所々には綺麗な絵が飾られている。

 花の絵、雲の絵。

 1つだけ黒く塗りつぶされた絵が気になった。



 そう言えば。

 さっきから人の気配が全くない。

 普通なら家の人が1人くらいいてもおかしくないはず。

 どこかに行ってるんだろうか。


「中野」

「え?」

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