四十八歳の詩
行軍

とにかく進むんだよ。


時には友や恋人と別れても。

寒い夜は塹壕掘って誰が使ったか分からない毛布にくるまって。


とにかく進むんだよ。

時にはやむ無くルートを変えたり一時的に撤退しても。

とにかく進むんだな。

暖かい珈琲をたまには飲めて女の子と月明かりの下でキスをして別れを告げても。

それでも進むんだよ。


後ろで倒れた友人や大事な人の思いを考えながら。


思いながら進むだよ。


それが自分自身が選んだ道でないとしても考えてる暇があるなら。


考えすぎずに進むんだよ。


行く先が楽しい所かとか苦しい所かとか考えない。


進めば分かるんだよ。



若い頃はある程度歳を取ると見えると思ってたけど、それは間違ってたと思う。


見えないから進むんだよ。


自分自身を時に卑下して時に鼓舞して。


とにかく進むんだよ。


雨が降っても風が吹いても暑くても寒くても。


汗をかき時には震えながら進むんだよ。


見えたと思った物が時には幻で絶望的になっても。


とにかく進むんだよ。



何か分かったようで実は何も分かってないから。


本当に分かるまで進むんだよ。


靴が脱げても代わりの何かを履いて。


とにかく進むんだよ。


前が見えなくなって少し休んでも良いから。


とにかく進むんだよ。

若い連中が自分自身を追い抜いても腹の中でクソガキがと笑えば良い。


苦笑いをしながらとにかく進むんだよ。


自分には彼等にはない積み上げて来た小さな自信があるのだから。



だから、進むんだよ。


進みたくても進めなかった人達とまた何処かで出会えたら良いなあと思いながら。


進むんだよ。


最近はそんなに笑えなくなったが、また笑えるよ。

進むんだよ。


周りに馬鹿にされても。


何も先に無くても。


とにかく進むんだよ。


不器用な自分にはそれしか出来ないから。


泣きながらでも進むんだよ。


這ってでも進んで見せてやるんだよ。

















終わり




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