もう一度君に会えたなら
 お母様は悲しそうに微笑んだ。
 お母様はわたしの髪の毛にそっと触れた。

「あなたはわたしたちの大事な娘よ。あなたの幸せを願っている。わたしは父の言いつけを破ってあの人と一緒になった。今でもその選択が間違っていたとは思わない。でも、今ならお父様が反対した気持ちがわかる。あなたには誰よりも幸せになれる道を与えてあげたいと思っているの。周りに反対されず、守られる人生を歩ませたい。あなたのためにどうしたらいいのか分からない」

 わたしはお母様の本意が掴めず、首を縦に振った。
 ただ、ところどころ聞こえてきた言葉をつなぎ合わせ、お母様がわたしの幸せを願ってくれているということは理解した。

「お父様とお母様はわたしと義高様を会わせてくれたじゃない。わたしには義高様がいるから、幸せになれるわ」

 悲しそうな表情を浮かべるお母様を安心させるためと、今の自分の満ち足りた気持ちを伝えるためにそう告げた。
 だが、お母様は一層悲しい顔をしてしまった。

「もっと違っていたら。あの人がああでなければ、あなたの望みをかなえられたかもしれないのに」

 そう苦々しく呟いたお母様の目にうっすらと涙が浮かぶのを感じ取れた。
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