もう一度君に会えたなら
※※

 わたしは、難しい顔をして入り口の前に座り込む女性の顔を覗きこんだ。

「ねえ、あの人のところに行きたいの」
「だめです」
「お願い」
「わたしを困らせないでください」

 彼女は苦笑いを浮かべつつ、そう言い放った。

 あの日、お父様の来客に出会ってから数日が経過した。それからわたしはあの人に会うことができていない。お父様もお母様も彼に会うのを快く思っていないのか、あのあとすぐに部屋に連れ戻されてしまった。

 問答を繰り返したのち、女性は深々とため息を吐いた。

「なぜ姫様はあの人にお会いになられたいのですか?」
「分からない。でも、会いたいの」

 わたしは心の中にある感情をうまく言葉にできなかった。
 扉が開き、お母様が入ってきた。
 お母様は女性の傍に座り込むわたしを見て、深々とため息を吐いた。
 女性の脇を抜け、わたしの傍までやってきた。

「あまりわがままを言ってはいけませんよ。困っているでしょう」

 わたしは口を噤んだ。わたしがあの人に会いたがっていると誰かから聞き、説得しにきたのだろう。いつもは親のことを素直に聞くが、彼に関することだけはわけが違っていた。

「どうして、あの人に会いたいの?」

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