もう一度君に会えたなら
 わたしは義高様の部屋に行くことにした。義高様の部屋の障子をあけると、義高様がわたしを見て笑みを浮かべた。その手には分厚い書物が握られていた。

 わたしは義高様の傍に行くと、その本を覗きこんだ。中身を見てもさっぱり理解できなかった。
 眉根をよせたわたしの頭をぽんと叩いた。

「まだ姫には難しいだろうね」
「わたしが義高様くらいの年になれば読めるようになるわ。そしたら義高様の好きな本を教えてください」

 義高様は一瞬顔を強張らせた。だが、すぐに笑顔を浮かべた。

「そうだね。それまで姫と一緒にいられたら」
「ずっと一緒よ。だってわたしたちは結婚するんだから」

 義高様は目を細めた。

 わたしたちはその足で庭に出た。義高様はほんとうになんでもよく知っていた。
 難しい本も読めるし、庭に咲く植物の名前も教えてくれた。
 わたしはそんな義高様と一緒にいるのが、何よりも楽しかった。


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