恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
ついたわよ、とエレベーターの扉の上の階表示が20階を示し、ホテル層のロビーに到着した。

金色にふちどられた黒い絨毯が敷き詰められ、吹き抜けには、こぼれおちそうな大きなシャンデリアが飾られている。
大理石の壁には絵画が整然と飾られており、入った瞬間に日常の空間から切り離されたような感覚に陥った。

入ってすぐ奥のダークブラウンで統一された受付カウンターには3名の黒いスーツ姿の女性ホテルスタッフが姿勢を正して立っている。

あおいさんの姿をみると、すぐに一人の女性スタッフが奥の事務所へ走り出し、あおいさんとわたしがカウンターに着く頃に、白髪混じりのオールバックの黒いスーツを着た男性が対応した。

「あおい様、手配ができております」

オールバックの男性の左胸の金プレートには総支配人の文字がみてとれた。

「ありがとう。忙しいなか、ご苦労様」

「何かご案内できることがございましたら、なんなりと申しつけてください」

「結構よ。また何かあったらお知らせするわ」

あおいさんがやんわりと断りの言葉をかけると総支配人や周りにいたスタッフは皆恐縮していた。

さすが社長令嬢のオーラは違うよな、と羨ましい目でみると、

「案外気疲れするものよ」

あおいさんは、ふう、と軽くため息をもらし、あおいさんの後を追うように受付カウンターから右に折れたエレベーターホールへと向かう。
エレベーターホールも同じく金色に縁取りされた黒い絨毯が敷き詰められ、ホールの上にもシャンデリアが神々しく輝いていた。
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