復讐の女神

悪酔い

石井とサシ飲みする日が訪れた。

ゆりは仕事を終え、約束の場所に一人早めに来ていた。
石井はその頃、営業先での報告会議が長引いていたため
1時間ほど遅れるとゆりに連絡を入れていた。

ゆりは、どうやって時間を潰そうかと
辺りをキョロキョロしていると知ってる顔が
目の前を通り過ぎたので思わずその方を振り向いた。

相手の男は電話をしながら歩いていたため
ゆりの存在に気づかなかったようだった。
ゆりは、彼の後を追いかけると
片山課長が入ったホテルにゆりも入っていった。

ホテルロビーに向かうと
片山課長は電話を終え、待ち合わせをしてたであろう中年男性と対面し、
近くにあったソファに二人して腰掛けた。

ゆりは、咄嗟に鞄からグラサンとストールを取り出し、身につけると
彼らの近くにあるソファーに彼女も座り、読書をする振りをして耳をそばだてた。

中年の男性は深くソファに体を預けると
迷惑そうな顔をしながら片山課長に言った。

「この後、ここで森村さんと食事するんだろ?
なんでその前に私を呼び出すんだ」

「その前にお父さんに話があるんです」

「なんだ?」

どうやらその中年の男性は片山課長の父親のようだった。

片山課長は深くため息をつくと重い口を開いた。
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