この夏の贈りもの
剥がれはじめる
2階建ての校舎を探検するには半日あれば十分だった。


ドッシリとした木造校舎、木の香りに、森から漂ってくる緑林の香り。


自然の香りで溢れていることに気が付いた。


「花子さんもいないし、笑うモナリザもいないね」


「いるわけないだろ」


「幽霊は存在するよ」


「そんなのはわかってる」


そんな言い合いをしながら広い階段を上がっていると、不意に足を滑らせた。


危うく下まで落下しそうになった体を、どうにかその場で保つことができた。


「おい、危ないだろ!」


和が慌てて手を伸ばしてきた、その時だった。


「なに、してんだ」


そんな声が頭上から聞こえてきて、あたしたちは顔を上げた。


階段の一番上に唯人が立っている。


その表情は険しい。


「え……?」


「早く来いよ、マヤ」


険しい表情のまま、唯人はあたしへ向けてそう言ったのだ。


「なに、言ってるの?」


一瞬聞き間違いかと思った。


あたしの名前はチホだ。


唯人もちゃんとチホと呼んでくれていた。


マヤって、誰?


そんな言葉が喉の奥で出かかっている。
< 139 / 218 >

この作品をシェア

pagetop