この夏の贈りもの
☆☆☆

うぬぼれていたのかもしれない。


唯人は優しくほほ笑んでくれる。


唯人はあたしのことをからかわない。


唯人はあたし自身を見てくれている。


だけどあたしと唯人の関係は、仕事引き受け人と、依頼主以上のものではなかった。


唯人の言い間違いによってその現実を突きつけられたあたしは、教室へ戻ってきて更に愕然としてしまった。


裕は朝から同じ場所に座ったままで少しも動いていないのだ。


その顔色は更に青くなっている。


あたしは裕に近づこうとして、寸前で足を止めた。


裕の体がうっすらと黒いモヤで包まれているのが見えたのだ。


そのモヤは裕の胸のあたりから広がってきている。


「嘘……」


あたしは脱力してその場に座り込んでしまった。


「どうした?」


後から教室に入って来た和があたしの隣に立った。


「なんだ、これ」


裕の様子を見て驚いた声を上げる和。
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