この夏の贈りもの
この頃のホナミさんはまだ悪霊化していない。


裕が毎日来てくれることで、気持ちがまぎれているのだろう。


そしてある日、裕はホナミさんと約束を交わした。


「いつになるかわからないけど、俺が死んだら必ず迎えに来るからね」


「でも……」


「大丈夫。ホナミさんは戦争で家族も友達も失って、彷徨ってここにたどり着いたんだろ? 今のままじゃきっと成仏もできない。だから、俺が一緒に成仏してあげるよ」


幽霊と人間の奇妙な約束。


だけど、その翌日から裕はここに来なくなった。


教室が封鎖されてしまったのだ。


音楽室から出る事ができなくなったホナミさんは、それでも裕を信じて待っていた。


来る日も来る日も、裕を待っていた。


だけどいつの日か、その心に疑問が生まれたのだ。


毎日来ると言っていたのにどうしてこないの?


迎えに来ると言っていたのに、どうしてこないの?


その気持ちは徐々に徐々に膨れ上がり、悪霊化してしまったのだ。
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