この夏の贈りもの
☆☆☆

久しぶりに悪夢を見た。


目の前には唯人がいた。


唯人はあたしを「チホ」と呼んで、大きな手であたしの頭を撫でてくれる。


とても心強い存在で、あたしの心は唯人へと傾いていた。


2人でいれば幸せ。


怖い事なんてなにもない。


初めて感じる、自分の居場所。


だけど……。


唯人はあたしを「マヤ」と呼び始めた。


呼び間違えている事にも気が付かない。


唯人にとってあたしは「マヤ」の変わりでしかなかったのだ。


そう、きっと、出会った時の最初から……。


あたしは唯人の大切な「マヤ」によく似ているんだ。


だからざわざわあたしに除霊を頼みに来た。


見習いで、未熟者のあたしに……。


そう考えればすべてのつじつまが合っていく。


あたしは結局、また好きな人から裏切られる運命だった。
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