この夏の贈りもの
結局、あたしなんてなにをしてもダメだったんだ。


目立たないように気を付けていることもすべて裏目に出て、誹謗中傷の的にされる。


暗く沈む学校生活の中、唯一の救いは家業の霊媒師の仕事だった。


幼い頃からお父さんたちの仕事の見学をしていて、自分にもあの能力があるのだということを教えられて育ってきた。


街行く人々の中に霊がいてもそれが当たり前だったし、霊と人間とはほとんどなにも変わらない物だと思って育てられてきた。


霊だって元々は同じ人間なんだから、霊の気持ちになって考えてあげればいいんだよ。


お父さんとおじいちゃんはそう言っていた。


学校で嫌な事があった日は、彼らは生きている人間なのに人の気持ちが理解できないのだと思うようになっていた。


彷徨っている霊でさえ、自分が除霊をされる日まで大人しく待っていると言うのに、彼らはそれができない。


そう思う事で、イジメっ子たちのことをかわいそうな子なんだと思えるようになった。


そんな事、口が裂けても言えなかったけれど。


とにかく、あたしの心に少しのゆとりを与えてくれる空間が、霊媒師という特殊な能力だった。


「チホはそんなに可愛らしいのに」


突然そう言われて、あたしは唯人を見上げてポカンとなぬけな表情をしてしまった。
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