この夏の贈りもの
悪夢
宿直室は1階の隅にあった。


4畳半の和室で布団とラジオが置かれている。


あたしは布団をひいてその上に横になっていた。


冷暖房はないけれど、窓を開けると森の涼しい風が入ってきて心地いい。


スマホを確認してみたけれど電波は届かず、時間だけ見てすぐに投げ出した。


電気に近づいてくる小さな蛾をぼんやりと見上げて、5人の顔を思い出す。


明日から彼らの除霊が始まる。


そう思ってもなんだか実感がわいてこなかった。


彼らがすでに死んでいるという実感すら、わいてこない。


彼らから緊張感が伝わってこず、あまりにものんびりしているせいかもしれない。


あたしは窓を少しだけあけたまま電気を消した。


周囲が静寂に包まれる。


自分の部屋なら夜になっても外から人の声が聞こえてきたり、車の音が聞こえてきたりしている。


けれど、ここではそんな音も全く聞こえて来なかった。


時折虫の鳴き声が聞こえて来る程度で、耳鳴りが聞こえてきそうなほどの静けさだ。


寝返りを打つ布ずれの音がうるさく感じられる。


あたしはそっと目を閉じた。


足を撫でていく水の感覚をリアルに思い出させた。


あんな風に川に入った事は初めてだったのに、心の中に懐かしさが広がって行く。


気が付けば、あたしは目を閉じたままほほ笑んでいた。


すごく、穏やかな気分だった……。
< 54 / 218 >

この作品をシェア

pagetop