ダイエットの神様
 ずいぶんたったある日、紗枝が
食材の準備をしていると、長い
間、見かけなかった田崎麻美が紗
枝に会いにやって来た。
 麻美はすっかり痩せていて、高
校の卒業式の帰りだった。
「あの、私です。分りますか?」
 紗枝がよく見ると、高校1年生
の時の麻美が立っていることに気
づいた。
 麻美は紗枝のことを、すっかり
忘れていた。
「以前、すごく太ってて、あなた
にダイエットの相談にのっていた
だいた……」
 紗枝の頭の中は高校時代に戻
り、麻美に万引きの話を流されて
辛い思いをしたことや退学になっ
た情景が思い出されていた。
 紗枝は我にかえり慌てて、
「ええ、覚えてます。すっかり痩
せて、ビックリしちゃった」
「あなたのおかげです。ありがと
うございました」
 麻美は涙を浮かべていた。
「卒業式だったの?」
「そうなんです。見てもらいた
くって」
「おめでとう。よかったわね」
「これからもリバウンドしないよ
うに、がんばります」    
「そう、がんばってね」
「じゃ、失礼します」
 麻美はそう言って、笑顔を見せ
て去って行った。
 紗枝は怒る気にはなれなかっ
た。それより麻美を少し哀れに感
じていた。
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