(仮題)魔女のいるファンタジー
 部屋から一歩も出ずに生活できるというのは、一部特権階級のステータスと言ってもいいと僕は思う。

 明日食うものにも困る逼迫した経済事情の奴が、部屋から一歩も出なかったらそのまま餓死してミイラになるのである。まあ、格差社会も問題になっている昨今のルリーダでは、そういう事例もままあったりもするのだが。

 そういう意味では、ルリーダ皇子であるこの僕は、最高に恵まれた環境にいる。

 トイレ、風呂は自室にあるし。
 僕が部屋の扉を改造して作った食事専用窓から、お手伝いのメイドさんたちが三度の食事は届けてくれる。
 欲しいものがあればやはり同様にその小窓から。

 運動がしたくなれば、僕の部屋は少々動き回っても何にもぶつからないくらいのスペースはあり。
 勉強はネットでしていると言えば誰も干渉してこない。

 そんなこんなで、何が決定的な引き金になったのかはもう忘れたが、かれこれ三年くらい引きこもっている。

 さて、部屋の扉の向こうでは、五分ほど前から耳慣れた可愛らしい怒鳴り声が。
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