秘書室室長がグイグイ迫ってきます!

社長の誕生日なんて、すっかり忘れていた。
秘書、失格だ。

そして、自分の誕生日が目前に迫っていることも。


「かしこまりました。お喜びになられますね、きっと」

「うん。親父、志穂(しほ)の手料理、好きなんだよね」


志穂というのは聡さんの奥さんだ。


「広瀬さんは誕生日いつ?」

「私は……二月二十四日です」

「それじゃ、来週じゃないか」


と言いながら、伊吹さんにチラッと視線を送る聡さんにドキッとする。
伊吹さんは聡さんに伝えてはいないと言っているけど、私たちの交際、バレてる?


「はい。それではお届けしてきます」


私は動揺が顔に出る前に、慌てて部屋を出た。

それから社長のサポートが続く伊吹さんの代わりに、聡さんの方の仕事にかかりきりになった。
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