笹に願いを
どんな家かな、天野くんちって。
海が見えるのかな。
波の音も聞こえるのかな。
前、「夜と夜明けの海は最高だ」って言ってたよね。

興味がある。
1DKの、小さな彼の住みかに。
この人の暮らしぶりを垣間見たい。
この人のいろんなことを、もっと、もっと知りたい。

私は、照れているのを隠すように顔を俯かせながら、コクンと小さく頷くと「うん」と答えた。

「あー。そりゃいかんだろ、おまえはっ」
「え?な、なにが・・?」
「俺、おまえにキスしたいのに。だがここだとちょっと、なんつーか、不謹慎っつーか・・・ご先祖様とかおまえのご両親に見られてるような、他のご先祖様方にも見られてるような気がして・・やべーだろ、色々」
「あぁ・・・そうね、うん。気持ちはよく分かる」
「だったら俺を煽んなよ」
「ええっ!?わ、わたしなの?」
「そーだよ。ほら、行くぞ」
「は、ぁい。あ。待って天野くん!」

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