【完】素直じゃないね。
「あいつは渡さねぇから」
この頃は、週に一度、充樹先輩とお弁当を食べるようになっていた。
大抵は乃亜に部活の集まりがある曜日に、やっぱり場所はまちまちで。
今日も、充樹先輩とお弁当を食べる日。
朝、メッセージで、多目的室集合との通達がきている。
そんな昼休み前の四限は、化学。
化学室で行われていた授業が終わり、教科書やノートの片付けをしていると、
「おー、水内」
同じく隣で教科書を片づけていた乃亜が、黒板の前に立つ化学の先生に呼ばれた。
化学の先生は、五十代後半のおじさん先生。
ぽっちゃりとした体に白衣を身に纏っている。
「はいっ」
「ちょっと」
手招きされ、乃亜が先生の元へ駆け寄る。
そうしているうちにも、クラスメイトは続々と化学室を出て行く。
その中には、宙くんと話しながら歩いて行く高嶺の姿もあって。