【完】素直じゃないね。
だけど乃亜はあたしを見上げ、ふにゃりと破顔した。
「ありがとう、つかさちゃん。
でもね、大丈夫だよ」
一文字一文字が平仮名に思えるくらい、ふわふわとした柔らかい声で乃亜が言う。
「大丈夫って?」
「おばさんが、不審者出るって近所の人に聞いたらしくて、宙くんが送り迎えしてくれることになったの」
……なっ! くっそ〜!!
宙くんに先手を取られた。
あわよくば、乃亜との登下校を楽しんじゃおうと思ったのに……!
あたしは心の中で頭を抱え、地団駄を踏む。
あたしが言えたことじゃないけど、宙くんの過保護ぶりも大概だと思う。
たまに、小さな雛鳥に接する親鳥みたいに見えてくるし。