恋と愛とシュシュ
3 過去への叫び
「違う、違う、そうじゃないの。そんなことが言いたいんじゃないの」

きらめく指輪に、心は「嬉しい」とただ、叫んでいた。
そんな風に思ってしまう自分が嫌だった。

私は航のことが好き、別れたって好き、そんな思いにとらわれ、
志皇の行動を受け入れることに罪悪感が芽生える。

そんな必要なんてないのに、心は不自由だった。
思わずシュシュを突き返してしまうほどに。

大学を卒業して5年、大学院へ進学した志皇と航と離れて5年ということだ。
その5年間を知りたかった。
空白の5年を埋めて欲しかった。


大学の学部時代、瞳と航は恋人同士で、ラブラブなカップルとして評判だった。
すれ違いはじめたのは、就職と進学と、進路が分かれてから。

就職して2年たった頃からだんだん距離が開きはじめ、
連絡がとれなくなっていった。

「結婚しよーね」と約束していたのを、バカみたいに信じている時もあった。

臆病な私は航に会いに行くこともなく、
今こうやって志皇の指輪を目にしている。

そうだ、私ももう一度航を追いかければよかった。
好きだって、好き、だってもう一度言いたかった。

〝今まで何していたの〝 は私の方だ。

志皇は私に会いに来てくれた。
航はSNSをやっている。調べればすぐに居場所がわかるに違いない。

私はただ、家と会社を往復しているだけだった。

こわかった。
これ以上拒絶されたくなかった。

好きだったんだ。
本当に。

航のこと。





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