色、色々
彼女
高校二年生の夏。

教室ではクラスの人の大半は携帯画面に写る文字に目を凝らしている。

クーラーのきいた教室、その冷たい空気を回す扇風機。
僕の頬にあたる風は冷たく乾いていて、どこか悲しく硬い風だった。

中学三年生の夏。

窓際の席で見た届きそうもないくらい遠くにあるのに、今にでも襲ってきそうな入道雲に夏を感じ、弱々しく教室に入ってくる風はどこか楽しそうで、僕の頬を通り抜けるくせに僕を尻目に、彼女の髪をたなびかせ、悪戯に彼女の顔を僕へ向ける。
あたふたした僕の気持ちなんか知らない君は口角をゆっくりとあげ、僕に微笑んだ。

中学三年生の僕の世界には緑は深く、 空で輝く太陽は神々しく、ゆらゆら僕を嘲笑う陽炎ですら輝く中にはいつでも、君がいた。
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