専務に仕事をさせるには
辞令 専務秘書兼教育係

「小野課長お疲れ様でした。 瀬戸さんもお疲れ様!」

と、社長はいつもの様に労いの言葉を掛けてくれる。


小野課長と私はお疲れ様でしたと一礼をして社長を見送る。


すると社長は立ち止まり


「そうだわ! 瀬戸さん着替えをしたら私の部屋まで来てくださる?」


「え? あっはい…」


社長は私の返事を聞いてにっこり笑って会議室を出て行かれた。


「小野課長! どうしよう? 私クビですかね!?」


「なに? 瀬戸さんあなた何かしたの!?」


「えっと… それは…」


私は包帯の巻かれた右手を左手で触る。


「まさか!? あなたが専務を!?」


「小野課ちょー…」


「覚悟して行ってらっしゃい!」


小野課長は縋る私に冷たく言い放った。

私は着替えを済ませると荷物を7階開発室まで運んだ後エレベーター横のフリースペースの自販機の前で


「アルコールが出てきますように!」

と、馬鹿な事を願って缶コーヒーのボタンを押す。


「やっぱりお酒なんて出て来ないよね…」


当たり前のことを言って缶コーヒーを一気に飲み干す。


「仕方ない! 覚悟を決めて私の裁決を頂きに行きますか!」


頬を両手で叩き自分に喝を入れ18階の社長室へ向かう。





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