この広い世界で、2度目の初恋を


「結局俺は、守ってるつもりだったんだ。七海の事を本当に助けてたのは、舵だった……」


樹くんは、私のこといつも守ってくれてたよ。

だけどごめんね……ちゃんと伝えられなくて。

でもどうか、私がつけてしまった傷を、三枝さんが癒してくれますように。


「ごめんな、七海……」


そして去っていく背中に私はようやく、涙を流すことが出来た。

「好きだよ……樹くんの事が……」


誰よりも、あなたが好きです……。

伝える事は出来ないから、遠ざかる背中に、小さい声で呟く。


「ごめんね……今まで、ありがと……うっ」


ポロポロと流れる涙を拭うこともせずに、樹くんの背中を見つめる。

明日が来たら、もう泣かない。

ちゃんと、笑顔になるから…。

弱音を吐いたりなんかしない、ちゃんと1人で立てるくらいに強くなるから…っ。



今だけは、泣いてもいいよね……?

どんなに言葉で諦めると言っても、やっぱり涙はあふれる。


心と体は裏腹で、今にも追いすがりたい体を必死に抱きしめて、放課後、夕日の照らす廊下の真ん中で、ひたすら泣いた。


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