龍の神に愛されて~龍神様が溺愛するのは、清き乙女~
「絶対に褒めてないだろう、お前」

「褒めてますって。
でも、女心がわからなかったのは本当でしょう?」


やんわりと首を傾げる絢嶺に、皐月は言葉を詰まらせる。

確かに、絢嶺の言う通りだ。

必死に書かれた恋文も、ほとんど内容が理解出来なかった皐月である。

皐月は正当法では落とせない。

女の神々は、そんな事を噂しているらしい。

そんな噂がされるほど、恋というものに疎かったのだ。

言われて当然だろう。


「会ってみたいですね、兄上を一目で落としたその巫女に」


正当法では落とせないと言われていた皐月を簡単に落とした巫女。

絢嶺も、純粋に興味がある。


「なら、会ってこい」

「……は?」


皐月の突然の言葉に、絢嶺は思わず聞き返す。

簡単に言うが、絢嶺も外へ行くと繧霞に怒られる。

なのに、行けというのか。


「そうか……。
そうだ、私が行けなくともお前がいたな」

「何がそうか、ですか!
私を巻き込まないで下さい!!」


叫ぶ絢嶺に、皐月はにっこりと笑ってみせる。


「行ってくれるよな、絢嶺?」


有無を言わせぬ皐月の声。

絢嶺は、言葉を詰まらせる。

こういう時の皐月は、しつこい。

絢嶺が頷くまで同じ言葉を繰り返すだろう。

こうなったなら、仕方ないな。


「わかりました、行きます」

「流石、私の弟だ」


皐月は満足そうに言う。

流石というより、言わなければならない雰囲気だった。

結局は、皐月の言う事には逆らえない絢嶺だ。

頷く他に、あるはずがない。
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