からっぽ。
「ごめん……」

その第一声は、不安な気持ちを一層重くさせる。

「どうして?」

理由を聞ける余裕などなかったのに、聞いてしまう私。


会う時間が作れなかった事を謝ったんだと知るまでの私は、顔も引きつったままだった。


「子供の事なんだ……」


絶望的な言葉しか、想像してなかった私は、一瞬、安堵の表情になる。


「俺が、引き取って育てる事になった」


この何分かの間に、上下した感情が、宙に浮いた様な感覚。


選択肢の中にあった事だったケド、女性が子供を手放す事は無いハズと、思っていた私は、頭の中から外していた答えだった。



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