理系女子は恋を知らない

学校の外に出ても相も変わらず辺り蝉達の喧騒に包まれている。

いい加減にして欲しいと思いながらもこのうんざりする暑さから逃れるスベを考えなければならない。

「暑いね...」

「そうだね...」

特に今まで言葉を交わしたことのなかった僕らの会話がこの灼熱の陽の下でうまく弾むわけもなく、ただ二人とも帰路の上を流れていた。


「上崎さんも駅?」

同じ帰路なのだから行き先は同じはずであるのにもかかわらず、沈黙に耐えかねた僕の口から出た言葉がコレだ。

「駅です...」

かなり疲れ切っているのだろう。彼女は歩くのがよほどしんどいのか、息を弾ませ額にはうっすらどころではない汗が滲んでいる。

僕とて例外ではないが。

「大丈夫?どこかで休む?」

我ながら気の利いた言葉だ。幸い近くに公園があったので、そこのベンチに腰掛け一休みをとる。

「ありがとう...電車の時間は大丈夫ですか??」

「あー、、心配しなくていいよ。どうせ家に帰ってもすることないし。」

ベンチに小さく腰掛け水筒からお茶を出し一息ついている彼女は、小柄でメガネでおさげ髪なのに、、、妙に僕の琴線に触れた。

目が合う度に伏し目がちに笑う彼女は少し色っぽかった。

夏の暑さは、人を変えるのか?
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