この物語になんて名前をつけよっか?


そして明音はこの二人を身近で見たことがあることに気が付く。同じクラスにいた男女二人だと思い出した。まだ入学して間もないからか、二人の名前を思い出せないでいると少女は明音に視線を向けた。

「…あなた同じクラスの末吉だっけ。名前見たとき女の子だと思ってたから印象残ってるんだよね。」

「確かに、俺もそれでお前のこと覚えてた。あ、俺牧野志紀(まきのしき)な、よろしく。」

さらりと会話の間に自己紹介を挟んできた少年、志紀は明音の肩に腕を回して笑った。名乗ってもらったからには覚えておかないとと明音は頭の中で志紀の名前を数回唱えた。そちらは?とでもいうように明音は少女に目を向けた。その視線に少女は気が付いたのか口を開いた。

「…藤小咲(ふじこさき)、ごめんね勝手なことして。ちょっとイラついちゃってさ」

そのときはじめて少女、小咲は明音に笑みを見せた。先ほどまですごく怖いイメージを抱いていたのか明音は内心驚いているものの、それを表に見せることはなかった。
時間を忘れていた3人の耳には授業始まりのチャイムが聞こえた。急いで戻らないとと3人は同じ目的地である教室へと走る。廊下に入り、全力で走っていると後ろから「廊下は走らない!!」と先生の大声が聞こえてくる。それに驚き3人は足を止め、後ろで怒っている様子の先生に軽くおじぎをしてはもうこれでは間に合わないだろうと諦めて歩き出した。急いでいる様子も見えない3人の様子にとうとう先生は大きなため息を漏らしてその場を去っていった。
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