東方想雨天
 どれぐらい経っただろうか。霊夢が落ち着き、にとりは抱くのを止め、元の位置に戻った。
「はぁ…情けないな。今まで普通に異変とか解決してたのに」
「まぁ…そういうこともあるよ。でも、確かに意外だね。魔理沙と喧嘩することはいつもだけど、霊夢が感情的になるなんて…。いつもは、魔理沙が言うのに」
「今回の異変がそれだけ普通じゃないってことが身にしみてるのかも。最初のチルノと大妖精にもかなり苦戦したわ」
「えっ、そうなの?そんなに強くなったの?あいつら」
「いや、正確にはあいつらの影ね」
「影?」
「そう。私の推測だと、その者の深層心理を具現化し、本人の無意識下で自由に行動したり、取り憑いたりしているの。しかも、その影の能力は本人の倍以上の力を持っているわ」
「成る程ね…それで、この先やっていけるか臆していたのか」
「うぐ……はっきり言わないでよ」
「まぁ、まぁ、気にしないで。そう思うのは仕方ないよ。それに……」
「?なによ」
「私にもそれが今見えてるもの。霊夢の後ろに、同じ霊夢の影が」
「………っ…!?」
 霊夢は咄嗟に後ろを向き、間を取った。恐れていたことが事実となった。自分の影が現れたということは、自分の闇が具現化したのと同じ。禍霊夢と言ってもいいだろう。このままでは、異変解決の名よりも、異変の首謀者にも成りかねない。霊夢は歯軋りし、禍霊夢に攻撃を仕掛けた。
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