東方想雨天
 夜。暗い部屋の中で、雨那は起きた。尿意を催して厠へ行き、帰ろうとすると、廊下に霊夢がお茶を飲みながら月を見ていた。
「あんたも飲む?」
 霊夢の誘いに、雨那はゆっくり頷き、霊夢の隣に座ってお茶を作って貰った。お茶は温かくて、渋みの優しい味がした。すると、少し黙っていた霊夢が月を見ながら喋り始めた。
「あんた…覚えてるか分からないけど……。あんたの過去を全部見たわ」
「あ……。そのどうでした?正直……引きましたよね?」
「………。私は、ああいうこと、よく知らないし。何とも言えないけど……。あんたは、どうする?これから」
「そうですね……。正直…現実に未練はないし、ここで過ごそうとは考えてはいるんですが……住む場所が……」
「それなんだけど、私に案があるわ」
「え……」
 霊夢は、昼に早苗と話していたことを雨那に伝えた。分社を造り、そこに住むこと。そして、条件として信仰援助金を支払うこと。また、雨神としてできることを分かり易く伝えた。
「………」
「どう?良い案じゃない?」
「分社に住むのは確かに良い案です。ですが……そこは、私1人だけですよね?」
「そうね」
「私、ずっと独りだったの見てますよね?それでも、分社に住まわせる気ですか?」
「その点は大丈夫よ」
「?」
「私の他に、ここには鬼の萃香がいる。あいつは邪魔だし、分社に住まわせる予定よ。また、それでも寂しく感じるなら、私のとこに来て良いわよ。質素なお茶菓子しか出せないけど、来るなら大歓迎よ」
「霊夢さん……。……ありがとうございます!」

 数日後、博麗神社の境内の片隅に、倉庫に見立てた分社が建てられた。そこに住まう神は、里の人々を一日で信仰を得る結果になるが、それはまだ先の話。異変の終わりは誰もが思っていたが、ただ1人終わっていない者がいた。
「博麗の巫女……。次こそその命、取らせていただくわ」
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