愛しい人

「大津先生が外科外来まで来てほしいって言ってるんですけど、今すぐ行けます?」

「ええ、はい」

「じゃあ、すぐ行くって言いますね」

 看護師は「先生、小石川さんの娘さん今から降りてもらいます」と電話の向こう側にいる大津にそう伝えると終話ボタンを押した。

「五十三番診察室です。場所、分かります?」

「はい、分かります。ありがとうございます」

 花名は看護師にお礼を言と、エレベーターで二階フロアーにある外科外来に向かった。

 明かりの消えた外科外来はひっそりとしている。

花名は五三番と書かれた診察室の前に立った。

その時、目の前の扉が勢いよく開き大津が顔を覗かせた。

「あ、どうも。さあ、中に」

 大津は花名を診察室の中に招き入れる。

「ちらかっててすみません」

 申し訳なさそうにいいながら、大津は花名に椅子に座るように促した。
花名はいつもと違う様子の診察室を見渡す。デスクの上は勿論、ベッドの上にも書類が山積みにされている。

「レセプトやら、サマリーやらがたまってしまって、この様です」

 花名には大津が何を言っているのか理解できなかったが、とにかく処理しなければならない書類が沢山あるということは分かった。

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