「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】 

14.大きな勇気 小さな一歩




紙一重の強さってなんだろう。


あの日から……裕先生に問われた質問ばかり考えてる。


あの夜、紗雪はとっても優しかった。

こんなにも優しくしてくれる紗雪が好き好んで、
仲間外れになんてするはずない……。



紗雪は……あの時何て言ってた?


確か……







自分で心を開こうとしない人に、
こっちから近づいても疲れるだけだから。

だったら、それは友達じゃないよね。

一方通行なんだからさ。
一方通行なんて保護者だけで十分じゃない?








友達じゃない。





その言葉にだけ、私……過剰反応してた。


受け入れられない見てくれない寂しさを、
相手ばかりに押し付けて心を閉ざして守ってばかりになってた。


話す努力をしなかった。


交わる努力を忘れて助けてくれる、
おんぶしてくれる人だけを当たり前のように待ってた。



弱さに甘えて我慢することだけが、
心を閉ざすことだけが強さだと言い聞かせてた。



だから……大嫌いだった。



私を苛める人も、私自身も、家族も……学校も先生も。



教室の自分の机、席について井村さんの席だけを見つめる。

今日も誰かと言葉を交わすわけでもなくて、
ひっそりと読書に読みふける。


井村さん自身から世界を遮断している自己防衛のフィールドのように私には映って。


彼女の背中を見つめながら心の中がざわつく。


寂しいんだよね……寂しくないわけないよね。

私が……あの時、寂しかった。



寂しくて誰かと交わっていたかったのに、
交わっていたいと望む分だけ、どう思われてるのかが怖かった。



誰かの視線が怖くて怖くて……殻の中に閉じ込めた。



殻の中は優しいから。
殻の中は……優しくて寂しい場所。


その寂しさを私は……知ってる。


あの頃、二人だけの時間を大切にして、
僅かでも私を友達として受け止めてくれた奈知。


あの頃の私は……奈知の心すら読み取ることが出来なかった。


偽りの友達だと罵って……気に入らない現実の責任を奈知に押し付けた。


でも……今なら……。


「里桜奈、何難しい考え事してるの?」


額にコツンとデコピンして私の正面で微笑む紗雪。

< 56 / 125 >

この作品をシェア

pagetop