夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
9.Good times & Bad times
次第に無口になる彩華を、伸彦はそっと見守る。

正直、恋に区切りをつける為にわざわざ海に出向くという感性は伸彦には微塵も理解出来ないが、夕べ一睡もしなかった彩華が少しでも眠れるなら付き合ったかいがあると考えていた。

砂っぽい床を、気持ち手で払って彼女を寝せる。

長い睫毛、小麦色になった綺麗な肌。
化粧は剥げかけているが、顔の造作は整っている。

……無防備にもほどがある。

伸彦は苦笑する。

彩華はどうしてモテるのかと伸彦に聞くが、彩華だってモテるのだ。自覚が全くないだけで。

だから、ついつい保護してしまう。

伸彦にとって彩華は珍獣のようなものだった。


いつもきゃんきゃん騒いでいて、自分のことで手一杯。
まさか自分が周りから狙われている珍しい生き物だとも気付かずに、可愛がられれば誰にでもついていく。

どうしてそこまで無防備で無事に生きてこれたのか、そっちの方が不思議でならない。
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