夏の終わりの失恋歌(恋愛中毒1)
2.Little Tokyo
そのダーツバーは、『Little Tokyo』という。

Little Tokyoなんて、外国にある日本人街を指す言葉なのに、変なの。と、彩華の彼氏、崇城明(そうじょうあきら)が呟いたことがあった。

「例えばどこにあるの?」
「ニューヨークとか」

「へぇっ。
ニューヨークかぁ。行ってみたいわーっ」

その一言で、彩華の気持ちはニューヨークに飛んでしまったので、それ以上の会話は覚えていない。


崇城明は今、社会人一年生。
慣れない仕事で忙しい。

お陰で、大学二年目の彩華は割と退屈な日々を過ごしていた。

……というか、過ごすはずだった。

しかし、彩華はそれならばと、友人たちと遊ぶ日々を選んだのであった。


その夜も、大学のバンド仲間を誘ってダーツを楽しんでいた。
もっとも、運動神経はさして良い訳でもないので、ダーツの成績はまぁそこそこといったところだ。

「もー、彩もたまには勝ちたいんですけど?」

慣れないアルコールに飲まれた彩華は真っ赤な顔で絡む。

「真ん中に当てれば勝てるって☆」

なんて、今日ダーツは初めてというエイジがすっかりコツを覚えて楽しそうに笑う。

「あー、駄目、なんか頭痛くなってきた」

彩華はダーツの前から離れて、カウンターに突っ伏した。
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