雀の恩返し


朝になり

僕はベッドから飛び起きた。

どうか
昨日の家出娘が【お世話になりました】と書置きを残して、家から出て行ってますように。
それだけを願って扉を開いて居間を見渡すと

いない

彼女の姿はなし。

「よっしゃ」
小さくガッツポーズなどして、顔でも洗おうと思っていると

南向きにあるベランダのカーテンが揺れていた。

思わず二度見して近寄ると

ふんわりとした初夏の風が部屋に流れ、ベランダの柵にちょこんと座った彼女が横並びのスズメと一緒に会話をしていた。

「そっか都会は危ないね」
彼女は真剣な声を出し、足元にもいる雀に「うん三ヶ月はいるから大丈夫」って会話する。

水色のシンプルなTシャツに白いハーフパンツ。
ピンクのエプロン。
ショートカットの髪の色が雀に被る。
白い肌に黒目がちな丸い目。ピンク色した頬と小さな唇。
朝の光と空気を胸いっぱいに受けた元気で明るい女の子。

三ヶ月はいる?
冗談じゃない!いや……それよりも。

僕は声も出さず
そっと彼女に近寄ると

「あーご主人様!おはようございます」

飼い主を見つけた仔犬のように、彼女は嬉しそうに足をブラブラさせて手を振った。

バカ!やめろっ!
ここは3階だぞ!
落ちるっ!

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