雀の恩返し

しばらくは仕事に集中。
仕事に逃げるしかない。

そしてスズメ探し。

裏のマンションの電線を見上げ
沢山並ぶスズメをチェックするけど

正直
誰がどれだか遠いから全然わからない。

付近にカメとラッコのぬいぐるみがないか探す。
端を突っついて中の綿を出し
ねぐらにしてないか探すけど見当たらない。

ゴミを捨てる時
猫を追い出してスズメ待ちするけど
カラスしか来なかった。

毎朝
早く起きてベランダで雀待ち。

何匹か雀がやってきて
手すりに並んだり僕の足元に降りたり
妙に人懐っこい。

もしやこの子?

「スズメなの?」
しゃがみこんでコロンとした雀を見ると、その子は僕を無視して壁際にある青い小さな缶をくちばしで突っついた。

こんな缶ってあったっけ?

僕は缶のふたを開くと
底には顆粒状になっている、小鳥のエサが入ってた。

そうか
これをまいていたから、うちのベランダはスズメがいっぱい来てたのか。

「これを待ってた?」
僕はさっきの雀に聞くと「ちゅん」と答えが返る。

この子
本気でもしかしたら……。

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