雀の恩返し

日曜日は家で平和に過ごし。
マリオカートを教えてあげると、身体を斜めにさせながら暴走して楽しんでいた。
族の素質あり。

そしてすぐ月曜日。週の始まりの朝。

スズメはお弁当をふたつ用意している。

「スズメも今日からお仕事です」

「仕事?」

「はい。働きながらご主人様を幸せにする種を探します」

また
わけのわからない事を言い
うっとりと遠くを見て自分に酔っている。
幸せそうでうらやましい。

「合鍵は作りました」
ジャ―ンと取り出した鍵。いつの間に作ったの?油断も隙もありゃしない。

「行ってらっしゃいませーー!」
いつも以上に大きな声を出して
スズメはベランダから落ちそうなぐらい身体を使って両腕をブンブン振っていた。

朝の罰ゲーム気分。

僕は今日も振り返らずに、走って駅まで一直線。

じっとり朝から汗ばみながら電車に乗り、企業広告をチェックする。
一番目を惹くのはどれだろう。
色合いがいいのはどれだろう。

秋にリニューアルする目薬で頭がいっぱいになり、スズメの仕事の件をすっかり飛ばしてしまった僕。

へタレなだけじゃなくて

僕の考えは甘かった。


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