この想いが届くまで

02 会いたいです2

 国際線到着ロビーで西崎は若い三人の女性に足止めされていた。
「社長! ありがとうございました! 今回の研修でいままでになかったアイデアに刺激を受けてより一層……」
「お礼なら花岡さんに言ってください。彼女が熱心に……」
「でも許可下さったのは社長ですよね?」
「……荷物、そろそろ出てきますよ」
「社長はご自宅へはお迎えがくるんですか? もし、電車やバス使うならご一緒に……」
 ある女性へ返事を返せば、また別の女性から矢継ぎ早に質問がくる。キリがないなと心の中で思いながらも丁寧に対応し、はっきりと告げる。
「タクシー呼んであるので。それでは、失礼します」
 立ち去ろうとすると背後から「こら! あなたたち!」と女性の声が響く。「げ、部長」と若い女性が呟く。
「なに社長の足止めしてるの。さっさと荷物もらいに行って帰りなさい。ここで解散、お疲れ様! ……社長、行きましょう」
 西崎は花岡と呼ばれる女性に促され出口へと向かった。
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