同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


「彼と関係してたあのとき……彼の娘、愛咲と同じくらいの年齢だった。だからあたし、今頃になって、なんてことしてたんだろうって……自分が、許せなくて」


独身だったあの頃、不倫=相手の家庭を壊すってことに、リアリティがなかった。

彼だけ手に入ればあとのことは知らないって。

身勝手にもほどがあるけど、恋に溺れていたあたしはその愚かさに気が付けなかった。

そのころからずっと傍にいてすべてを知っているハルは、あたしの肩からスッと手を離して前を向いたまま淡々と告げる。


「……いくら後悔しても、お前の罪は消えない。罪悪感も、一生背負ってかなきゃならねぇ十字架だ」

「わかってる……わかってるよ……」


今になってこんなにつらいのも、自分で蒔いた種。

だから、黙って耐えなきゃならないのに……弱音をこぼす権利なんか、ないのに。

思わず涙があふれて両手で顔を覆った瞬間、大きな手に肩を抱かれた。

ハルの唇があたしの髪に触れ、あたしの痛みを優しく包み込むような声が耳に届く。


「でも俺は……その罪ごと、お前を愛してるから」


……どうしてなの。いつだって、あなたは。


「そばにいて、涙を拭うことしかできなくても……お前の受ける罰に一生付き合うから」


あたし自身よりもうまく、あたしの傷を、なだめることができるの。


< 200 / 236 >

この作品をシェア

pagetop