ナツコイ×トライアングル




「俺は、信用できなかったか?」


あぁ、私って本当に馬鹿。

どうして疑ったりしたんだろう

こんなに綺麗な人。

こんなに汚れのない人を。

罪悪感で苦しい。

でも、首を締め付けているのは、他でもない私。

あの先輩が瞳を揺らすなんて。


「……ごめんなさい」

「いや、悪い、今の言葉は忘れてくれ」

「え…?」

「…安心しろ」

「……」

「俺とお前が知り合いなのは事実だ。
でも、俺はお前が水泳を辞めた理由は知らない」

「…はい」

「聞こうとも思わない。
……だから、そんな顔するな」


今にも涙が溢れそう。

どうして、そんなに優しいんですか。

よく知りもせず自分を疑ってかかったこんなヤツに、どうしてそんなに優しくできるんですか。


「ごめん、なさい…っ」


我慢していたはずの涙は、私の言うことなんて聞いてくれず、一筋、また一筋と流れていく。


「ごめんなさい…っ!」

「泣くな」

「…っ!」


先輩の手が伸びてきた。

目尻の涙を、拭ってくれる。

熱だけを淡く残す。


「知られたくないことを隠そうとするのは当たり前だ」


その熱は、そのまま私の頭に伸びた。


「だからいい、罪悪感なんて捨てろ。
俺がいいって言ってんだから、もう泣くな」


それでも、まだまだ涙は止まらず。

罪悪感は捨てられず、首を横に振った。


「ごめっ、なさい……」


次の瞬間、私の髪を滑るその手が、後頭部に回った。

そして、ぐっと引き寄せられる。

抗うことなく飛び込んだ胸は、温かかった。


「辛いことがあったのは分かった、何か知られたくないことがあるのも。
近藤、もう自分を責めるな。俺はそんなこと気にしない。
……涙、止まったか?」


先輩は、私の顔を覗き込んだ。

涙でぐちゃぐちゃの私の顔を。

――って、


「ちょっ!待ってください!今、相当顔酷いです!!!」


慌てて顔を手で隠したけど、たぶんもう遅い。

後悔に打ちひしがれていると

微笑みや苦笑しか滅多に顔に出さない先輩は、クスッとレアな物を見せてくれた。


「タオル、干すか」







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