ただあの子になりたくて


噛みしめた甘酸っぱいアップルパイを飲み下すのが、酷く辛い。

「あらやだ。母さん、かっこつけたこと言っちゃった。でもね、困ったらいつでも相談するのよ? 母さんはいつでも待ってるわ」

自分の頬を軽くはたいておどける椿のお母さんの優しさに、私は唇を固く閉ざした。

油断すると涙が出てきそうだ。

私の家は何でこんな風になれなかったのだろう。

私と話すとき、いつも眉間にしわを寄せていたお母さん。

口を開けばいつもお互いにいがみ合って、こんなにも優しい声で話すことはなくなっていた。

何が腹立たしいのかわからないほど、わけもなく争った。

幼い頃は違ったのに。

一体、どこで何を間違ったのだろう。


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