ただあの子になりたくて
私は、彼の問いに答える言葉など、何一つ持ってはいない。
私に言えるのはただ一つ。
「蒼介、ありがとう。じゃあ……」
もう時間はきっと近い。
私は無理やり身を引く。
「待てってば。わかんないけど、勝手に行くな、なずな」
私は目をみはった。
心臓がドキリと跳ねた。
その声が簡単に動きを制す。
彼が私の腰に優しく手を回す。
彼がそっと頭を起こす。
鼻の先が付きそうな距離に、私の息は詰まる。
けれど彼が私の大好きなくしゃりとした笑顔で、私を真っすぐに見つめて口を開いた。