ひと冬の想い出 SNOW
-ピッピッピッピッ


また、またこの音。


日に日に音が大きくなっている。


何の音だかもわからないし、聞いたこともなければ心当たりもない。


知らない電子音。


やはりわたしは霧の中に立っていて、辺りを見回している。


音のする方へ歩き出す。


…なんか変だ。


今までは歩き出した後、すぐに目覚めたのに、今は夢が終わらない。


-ヒューーーー


突然目も開けられないほどの暴風が吹き、霧がすっかり晴れた。


景色が初めて現れる。


「どこですか、ここ。」


わたしは歩道に立っていた。


目の前には横断歩道。


後ろは図書館。


信号が点滅し、赤になる。


もう少しすれば止まっている大型トラックや乗用車、バイクが右から左、もしくは左から右に流れ出すだろう。


何もおかしなところはない、ただの日常の風景。


でも、わたしは胸騒ぎがしていた。


何か、何かが起こるんじゃないか、と。


わたしは無我夢中で辺りを見渡す。


反対側の歩道に、小さな女のコ。


わたしはその子に釘付けになる。


だめ、だめよ、そのまま歩いたら!


-ヒューーーー
-プーーーーー


トラックのクラクションとともに、目も開けてられない暴風が霧を乗せてやってきた。


「だめ!」


めいいっぱい叫ぶわたしの声は、彼女に届かない。

< 20 / 23 >

この作品をシェア

pagetop